「もし予測できたら」という邪念から始まった
正直に言う。
最初の動機は、不純だった。
「AIで株価を予測できれば儲かるんじゃないか」——そう思ったのが、このシステムを作り始めたきっかけだ。
今から振り返れば、その考えは半分間違いで、半分は間違いでもなかった。でも当時の自分は、その区別がまだついていなかった。
株を始めて、負けた
投資を始めたのは数年前だ。
銀行口座に眠っている貯金が勿体ない。インフレで現金の価値は下がる一方。NISAで税金も節約できる。「これはやるしかない」と思って証券口座を開いた。
結果から言うと、最初の3ヶ月は散々だった。
ナンピンして損失を拡大し、狼狽売りして底値で手放し、気になるニュースで衝動買いして翌日に暴落する。教科書に書いてあるダメな投資行動を全部やった。
(詳しくはこの記事に書いた)
何度か損をしながら、ひとつの疑問が頭に浮かんだ。
「株価の動きに、パターンはあるのか?」
エンジニアの職業病
私はエンジニアだ。
パターンを見つけてコードを書くのが仕事だ。データがあれば分析したくなる。「もしかしたら、過去のチャートデータから何かを学習させれば……」
この「職業病」が、システム開発の引き金になった。
最初は小さかった。Pythonで移動平均を計算して、「5日移動平均が20日移動平均を上回ったら買い」という単純なルールを試してみた。
精度は51%だった。
ランダムより1%マシ。でもこれは手数料を払えば確実に負けるレベルだ。
「もう少しやれば良くなるかもしれない」
その「もう少し」が積み重なって、いつの間にかシステムは複雑になっていた。
今、何を作っているのか
現在のシステムは、こんな構成になっている。
データ収集 毎平日16時に、日本株30銘柄・主要指数のデータをYahoo Financeから自動取得する。
テクニカル指標の計算 移動平均、RSI、ボリンジャーバンド、MACD、出来高比、VIX(恐怖指数)、ドル円レート。7種類の指標をリアルタイムで計算する。
機械学習モデル Random Forest + Gradient Boostingのアンサンブルモデルが、過去2年分のデータから「翌日上がるか、下がるか」を学習する。
予測の公開 毎朝8時に、AIが予測した各銘柄の方向(上昇・下降・中立)と信頼度をこのサイトに自動公開する。
答え合わせ 翌日の終値と予測を比較して、正解率を記録し続けている。
現在の精度:64.3%
2026年3月23日時点で、56件の予測を検証した結果がこれだ。
- 方向一致率: 64.3%
- 平均誤差率: 1.38%
- 目標: 65%以上(100件以上のベース)
ランダム(50%)よりは明らかに上だ。ただし、サンプルが56件と少なく、まだ信頼できる水準ではない。
65%という壁が、思ったより高い。
ソニー(6758)のような下降トレンド銘柄では精度が48%まで下がる。トレンドフィルターを試したが逆効果だった。class_weight=balancedも効かなかった。何が正解なのか、まだわからない。
なぜ公開するのか
予測精度が100%なら、黙って自分だけで使う。
でも64%の予測を一人で使っても、投資判断には使えない水準だ。
だから公開することにした。
公開することで「毎日記録をつける理由」ができる。記録をつけることで「精度が上がっているか下がっているか」が見えるようになる。見えるようになれば「どこを改善すべきか」が分かってくる。
そして、このプロセス自体を記録し続けることに意味があると思い始めた。
「個人が作ったAIが、本当に株価を予測できるようになるのか」——その実験の記録として。
この連載について
この記事を第1話として、このシステムの記録を書き続けることにした。
精度が上がれば報告する。改善策が失敗すれば正直に書く。目標の65%に届いたときも、届かないまま諦めるときも、その過程を全部残す。
次回:精度64.3%の壁。3つの改善策が全部失敗した話
免責事項: 本記事は個人の体験記録です。投資判断はご自身の責任で行ってください。